ウールパンツのクリースラインについて

ウールパンツのクリースラインってどうして付くのだろう。

って事で、化学に疎いのですがクリースラインについて書いてみます。

その前にシワについて。

シワについて

繊維間では糸状高分子が多数集まっている状態で、その中で規則正しく配列してお互いがファンデルワールス力や水素結合などの分子間力により結合している結晶部分と乱雑な配列の為に結合していない非結晶部分が存在します。

非結晶部分は結合していない官能基がある為、親水性などの性質をもたらしたり、また様々な染料と結合する事が出来ると言う事ですね。

結晶部分はお互いが引き合うので強いのですが、非結晶部分は弱く分子が動きやすくなっています。

曲げられると非結晶部分の分子が移動してしまいます。

それがシワの一番の原因と考えられています。

さらに生地を折り曲げると折り曲げた箇所は圧縮され織組織にズレが生じます。

そのズレた部分が加わると強固なシワになってしまいます。

綿や麻について

綿や麻は初期引張抵抗度(ヤング率)が大きい繊維なので固くて弾力性があまりありません。

(初期引張抵抗度っていう言葉の響きがなんか好きなので・・・)

ですので、その生地が折れてしまうと繊維間の分子間力に与える影響も多くなります。

元々含んでいる水分もあるので水素結合も切断されてしまう。

ちょっとの事ですぐにシワになりますもんね。

更に麻繊維は茎から採取された繊維ですので、その形状は真っ直ぐ(節はありますが)なので繊維間の分子もより切断されやすい。

一方、綿繊維は螺旋状の畝を持っていますので曲げへの抵抗力も麻よりはあると思います。

と言う事で、麻の方がシワが入りやすいですし入ると元に戻らないのもこういった繊維の特性によります。

綿や麻でも軽く付いたシワなら簡単に戻せますけど、キツく付いたシワって戻せないですよね。

さらに水分が関わってくるとシワも付きやすくなります。

水分の影響を受けても軽い負荷であれば繊維間の結合だけなので水分を与えると戻りやすいと考えますが、強い負荷になると繊維自体も損傷を受けてしまう。

綿や麻繊維の主成分セルロースは主に水素結合で結合していると言う事ですので、その結合が切断されて折れ曲がってしまうと元に戻す事は困難です。

糸は何本もの繊維を束ねて撚られていますので、表面のみの影響であればまだ誤魔化したり出来ますが、奥の方まで影響を受けるようであれば戻せないです。

繊維が影響を受けてしっまって、さらに織組織間がズレてしまった状態になるとシワを取り除く事は不可能ですね。

綿や麻の生地のシワが取れにくい原因はそこにあります。

お洗濯の際にもなるべく強いシワを作らないように考えて洗わないと。

洗濯ネットは衣類を保護しますが、それと同時に形を固定してしまいますよ。

と、長くなるので洗濯ネットの話はまた次に。

一方ウール生地は・・・

一方ウール生地はと言うと、シワが入りにくい生地ですね。

初期引張抵抗度(ヤング率)も小さいので伸長弾力性にも優れているせい。

折り曲げても圧縮された部分は伸びるので力も分散出来ますからね。

ただし、長時間圧縮された状態になればシワも付きますが。

それでも水分を与えれば元に戻ります。

水素結合が切断されてもシスチン結合があるので元の状態に戻るんですね。

それでもシワを付けるとなると、長時間負荷を掛けて圧縮したり熱を加える事になります。

ウール生地のクリースラインの原理は

生地を折り曲げ圧縮して負荷を掛けて、その部分に熱と水分を加えて強制的にウール繊維をコントロールし織組織をズラし冷却してセットする。

織組織間を少しズラして尚且ウール繊維同士を水素結合でセットするという事でしょうか。

織組織間をズラした状態で、その部分の水素結合の補強にもなっていると考えられるので外れにくくなっているのでは無いかと。

こうすればウールであってもシワを持続させる事が出来ます。

これがクリーニング業者の僕が考える、ウールパンツのクリースラインの原理です。

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