生地の”くせ取り”と”ころし”

「くせ取り」について

「くせ取り」とは生地を歪ませて凹凸を作ると言う事。

織組織を一方で広げると支点となる部分は狭まります。

これを利用して立体的な生地を作り出します。

ウール生地は柔らかくて伸び縮みしやすいですからね。

ただ、そのままの状態では単に伸び縮みするだけです。

その為にウール生地に水分と熱を加えます。

何故かと言うとウール繊維は水分と熱によって変化するから。

ウール繊維はクリンプ(歪み)を持っています。

クリンプは水分を与えると変化する性質を持っています。

水素結合が切断されるからでしょうか、リラックスした状態になります。

熱を加えるのは水分子をより活発に働かせて扱い易くする為、それと早く水分を逃して整形しやすくするのもあるかな。

ウール生地を歪ませて変化させる為にはクリンプも同時に変化させやすくしておかないといけません。

何故ならいくら伸ばしてもクリンプのおかげで元に戻ろうとしますし、歪みがあるせいででズレにくいのでは無いかと思います。

だから水分と熱を与えてクリンプも伸ばした状態で更に生地を歪ませるのだと。

そうすればクリンプに影響されずに織組織をずらす事が出来ますしね。

ずれた組織はクリンプの歪みのせいもあって元の状態には戻りにくくなっているようです。

水洗いをしても結構くせが残っていたりしますから。

生地を「ころす」とは

生地を”ころす”とはそのクリンプを操作する事。

(漢字に変換するのは怖い・・・)

生地を寄せ集めると凹凸が出来ます。

その凹凸が出来た生地に水分と熱を加えて凹凸を消して見栄えを良くします。

クリンプが水分と熱によって変化する性質を利用しているんですね。

水分と熱によってクリンプの歪みの起伏が激しくなります。

起伏が盛り上がればそれだけ繊維は見た目の長さ的には収縮したように見えます。

その状態を維持させながら水分をコントロールしてあげると水素結合やファンデルワールス力等の影響で固定されます。

つまり生地を縮める(詰める)事が出来るんです。

袖山や肩線などに使われていますね。

肩線はくせ取りと”ころし”の合せ技のような所もありますけど。

ただ、くせ取りと違って”ころし”た生地は簡単に元に戻ります。

弱い力で結合しているだけなので。

ですので直前で補強(縫製)する必要があります。

袖山や肩線なども直前で縫製されています。

でもいくら補強していても再度水分を与えてしまうと生地はもとに戻り崩れてしまいますので新たにセットし直さないといけません。

最後に

以上がクリーニング業者の僕が考える「くせ取り」と「生地の”ころし”」の原理です。

誰かに師事したとかテーラーさんに教えてもらったと言う事では無く独学で申し訳無いですが。

テーラーさんやクリーニング屋さんがYou Tubeでアイロンプレスの動画を上げられているのを見ていてちょっと書いてみたくなりました。

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