以前「ウールの風合いには天然油分が関係している?」という記事を書きました。
「ドライクリーニングをするとウールが本来持つ油分が失われる為にウールの自然な風合いが無くなる、だからドライクリーニングをしてはいけない」と当たり前のように言われています。
ですので、敢えて「もし天然油分が残っていると仮定すれば」という事で書いてみたんです。
ウキペディアにも「油分を含む」「クリーニングすると油分が奪われてしまう」と書かれていますね。
その表現をされると『羊から刈り取ったウールから付着した天然油分をそのまま残しつつ洗浄して糸にし生地にする』と解釈してしまいませんか?
少なくとも僕にはそう解釈出来ます。
実際は羊から刈り取ったウールは汚れを取る為に洗浄されますが、その際に汚れと一緒に天然油分は除去されてしまうようです。
いわゆる『ウール本来持つ天然油分』というのは取り除かれてしまうんです。
ウールマークカンパニーのウエブサイトにもその洗浄工程の動画がアップされていますので、もし興味があればそちらへ。
汚れから天然油分(ラノニン)を抽出しているシーンもあります。
洗浄時に除去されると言う事であれば、衣服としてのウール本来の自然な風合いというならば天然油分は関係無いと言う事になりますね。
「ウール本来持つ自然な風合い」とは『天然油分が除去されたウールがもたらす風合い』と表現して頂かないと・・・。
ただ、クリーニングで風合いが変わってしまうのも事実です。
前の記事でも書きましたが、そのクリーニング店での洗い方に問題があるのかも知れません。
乱暴な洗浄方法だとデリケートなウール生地が傷んでしまいますので風合いも悪くなりますからね。
それとは別にウール生地に塗布される加工剤の影響もあるのかも知れません。
この加工剤が少々やっかいなんです。
と言うのも洗う事を前提として加工剤は使用されていないからなんです。
洗う事を前提としていないので、当然ですが洗うとドライクリーニングでも水洗いでも加工剤は落ちてしまいます。
加工剤が落ちてしまうと風合いもガラッと変わってしまいますからね。
しかも再度加工剤を塗布しても同じような風合いには戻らない。
(おなじ加工剤が手に入る訳でも無い)
だから本当にやっかいなんです。
そのあたりの加工剤や風合いの話はまた後日に記事にしたいと思います。
加工剤の影響で風合いを保っているのであれば、その衣服の風合いは洗う事によって変わってしまいます。
そうであれば購入時やお仕立て時にお客様にきちんと伝えなければいけませんよね。
「ウール本来持つ油分が損なわれるからクリーニングはやめて」という表現ではなく、『洗うと加工剤が取れて風合いが変わる可能性がありますが良いですか?』とか。
ヨーロッパの高級ウール服地(特にカシミヤ)などの極上なヌメリ感は加工剤によってもたらされていると思います。
きちんと伝えれば、それに沿ったメンテナンス方法も見つかると思うんですけどね。